スタートアップが初めてのピッチイベントに出るにあたって

スタートアップの潮流が2012年から、さらに活気づいてきている。
メディア、ベンチャーキャピタルなどのサポート(環境作り)により、
若くて優秀な人材がリスクを取ってチャレンジすることを賞賛する空気が醸成されたことが要因だ。

さらにプロダクトを広めるにあたって情報伝達コストが飛躍的に下がったことで、
ますますスタートアップにとって追い風になっている(言うまでもないが...)。


そこで、プロダクトを広める手段の1つとして、ピッチイベントに出ることも個人的には良いと思う。

  • オーディエンスが顧客候補になり得ること
  • VCや同時期に起業したアントレプレナーとのネットワーキング
  • オーディエンスからのフィードバックによるプロダクトの課題発見

メリットとしては上記が挙げられる。
無料でプロダクトの宣伝もできるピッチイベントに、ザオリアはサービスリリース後に積極参加してきた。


| ザオリアが過去登壇したピッチイベント

  • Google for Entrepreneurs Tokyo 2012
  • gooya CREATOR’S HUB スタートアップイベント
  • Innovation Weekend Autumn 2012(サンブリッジグローバルベンチャーズとVenture Nowによる共催イベント)
  • Innovation Weekend Grand finale 2012(同上)
  • ニフティ社が主催する「CROSS VS」 ~ アプリ/サービス開発オーディション
  • エンジニアスタートアップミーティング#7
  • HUB Tokyo Spark Plug ~Tech~
  • LaunchCamp by エンジニアスタートアップミーティング
  • IT Startup Demo Night Tokyo 2013(インテルマイクロソフト社による共催)

これら以外にも数十名単位の小規模なイベントでもピッチをさせて頂き、
1年間で大小問わず、ほぼ毎月イベントに登壇していた。


前置きが長くなってしまったが、先日友人からピッチを教えて欲しいと連絡が来たので、
これからイベント登壇をする起業家にとって何か示唆や一助になればと思い、経験を共有したい。



| 事前準備

まず前提として考えなければいけないことが2つある。

1.イベントのタイプ
2.想定オーディエンス

たった2つを意識するだけで、ピッチのクオリティが大分変わる。

何故この2つかというと「ピッチ」と「プレゼン」は別物であるからだ。
ピッチとは初めてプロダクトなりサービスを聞く人向けのスタイルで、プレゼンとは説得をするためのものだ。
このサービスを使ってみたいなど、一瞬で魅力やスケール等の可能性を理解してもらうことがピッチの目的。
(人によって定義は違うと思うが、私の経験上そう判断している)


1.イベントのタイプについて


登壇するピッチイベントがどのようなものかを把握する必要がある。
スタートアップのピッチがメインなのか、交流会のいち場面としての位置付けなのか。
またプロダクトメインのピッチ、プロダクトのストーリーを重視するものなのか等がある。
アクセラレータが主催するDemo dayは普通のピッチイベントとは違うので、ここでは省略する)

実を言うと、私は恥ずかしいながらイベントに出始めた当初は何も考えずにピッチ資料を作っており、
ある時イベントの種類というものを意識するようになってから、資料を何パターンか用意するようになった。
それからは主催者にイベントの主旨や全体の流れ、持ち時間、参加者等を資料作りの前に確認するようにしている。


2.オーディエンスを想定する

イベントによって参加者は全然違ってくる。
新しいプロダクトの発表の場、エンジニアとのミートアップ、VCと出会える場、顧客発掘のイベント等
それぞれ性格が違い、ピッチをする目的も微妙に変わることになる。

言うまでもないがオーディエンスの種類によって興味は全然違ってくる。
例えば、VCだったら市場規模(リプレイスなのか新市場として魅力的なのか)や事業の成長性、チームメンバーの経歴が興味の対象であろう。
オーディエンスを顧客と想定した場合「顧客が抱えている問題」「ソリューション」をメインに共感を促すピッチ構成にしたほうが良い。



| ピッチの基本構成

過去のエントリーで重複してまう点もあるが、私がピッチ資料を作るときの基本構成がある。

A.共感
何らかの課題を解決するものなのか、あるいは何らかの新しい体験を提供するものなのか。
最初の入りでオーディエンスの視聴態度は決まる。

B.ソリューション
共感してもらった課題や楽しさを、どんなサービスで解決するのか、あるいは実現するのかを説明する。

C.ユーザー獲得
最初のマーケティングはどういうことをやってユーザーを獲得していくのか、
なぜユーザーは使ってくれるようになるのか、ということを伝える。事業のKSFが分かりやすいと、「なるほど!」となるかと。

D.ビジネスモデルとマーケット
どうやってビジネスするのか?も簡潔に説明する必要がある。
1つ注意することがビジネスモデルとサービスモデルは別物なので、意識すべきだ。

E.チーム
素晴らしいアイデアでもそれを実現するのが、どういうメンバーがやっているのか。
バックグラウンドや強みなどを端的に表現すると良いかと思う。

+αプロダクトのアップデート予定や仮に資金調達したら用途、テスト版の実績などもあるといいかもしれない。


大抵はこの5つをベースに作っており、イベントのタイプやオーディエンスによって資料を何パターンか用意しており、
さらに2分、3分、5分、8分、10分バージョンとバリエーションがあった方がいい。
因みに人が1分間に聞き入れられる文字数として300文字から450文字位というのがあるらしい。



| ピッチ資料の鬼鉄則

ピッチイベントの会場にもよるが、何点か意識したほうがいいことを挙げる。

  • フォントは最低でも36 - 40ptにすべき
  • ピッチのスライドは説明用資料ではない
  • 1枚のスライドには「ワンメッセージ」とする
  • 文字だらけのスライドが出た瞬間にオーディエンスはネットサーファーになるお
  • 最初の2〜3枚で聴くに値するか、判断される

(余談だがラップは最初の10秒で「ノレる」か判断される。ピッチでも同様に最初の「入り」が第一関門)

  • Q&Aやappendixも用意しておく

大抵のオーディエンスは懐疑的である、と仮定した場合減点主義で臨まれるものだ。
いいね!それいいね!的な人は、熱狂的なスタートアップ応援者しかない。
そのため、聴くに値するかどうかを突破した後に、オーディエンスは粗探しに徹し、攻撃的な質問をしてくるため想定問答集を用意した方が絶対いい。
私自身過去Q&Aセッションで痛い目にあったことがあるので、オススメする。



| ピッチは練習あるのみ

余程の完成度又は百戦錬磨じゃない限り練習はすべきだ。
他の起業家もやっていると思うが、私の場合初めて聴く人にとったら「すんなりと理解してもらえるのか」を気をつけている。

さらに録音しながら練習するのも有効的だ。
どこで躓いているのか、抑揚感はきちんと出来ているのか、は客観的に聞かないと分からない。
当日ピッチイベントに向かう電車の中でも聞きながら資料の微調整をしたりする場合もある。



| ピッチイベント当日に心がけていること

資料の作り込み、反復練習で自信を付けたらいざ出陣!となるが、最後の最後で私が行っていることがある。

それは「オーディエンスにストレスを与えない、もしくは軽減することを意識する」だ。
そのために重要になってくるのが会場の事前チェック、スタートしてから会場のテンションチェックである。

登壇者はイベント開始の1時間前くらいに予行演習が大抵ある。
(事前に資料提出以外は)PCとコネクタのチェックをするが、実はここに落とし穴がある。

Macを使っている人なら分かると思うが、たまにコネクタと相性の悪いプロジェクターがあって、
事前チェックをしなかった場合、自分の番になった瞬間にプロジェクターに映らない!?ということが稀にある。
そうすると、オーディエンスは複数のピッチを聞かなければならないのに、トラブルがあると疲れが出てしまい
聴く気が失せてしまう。

次に登壇者が多い場合、私が気にしていることは「タイムーバー」だ。
3分なり5分なりの与えられた時間枠があるのだが、時折豪快にオーバーする強者がいる。
そうすると、上述した通りオーディエンスは辟易してしまい、淀んだ空気が会場を覆う。
(司会進行役泣かせwww)

自分の順番が後ろの方だとはた迷惑なのだが、その場合ちょっとした工夫がある。
例えば、5分の持ち時間なら「お疲れのところ恐れいります。5分以内に終わらせますので…」と一言入れてから始める。
さらにタイムーキーバーが時間をカウントしているが、イベント全体で遅れが出ている場合10秒前後を残して終わらせるようにしている。
ベルを鳴らして終わらせるのと、鳴らせずに終わらせるのとでは印象が大分変わってくるためだ。


自分の順番が回ってくるまで、イベント全体の流れをチェックする意味で私は必ず最後方の席で会場の雰囲気をチェックしている。
そうすることで「場の空気感」を読めるからだ。
また最後方に座ってピッチを見ることで実は気付きもある。
最前列に座っている熱狂的なモノ好きはスライドの一言一句を隈なく読んでくれるが、後方列はほとんどスライドの文字が読めない。
そのため文字の大きさを意識したほうがいいと言える。


| ピッチイベント7つの教訓

取り留めもなく書いてしまったが、私の教訓を最後に記したい。

1.イベントのタイプを知る
2.オーディエンスは誰かを意識する
3.最初の1分または2〜3枚のスライドが勝負の分かれ目
4.ピッチの基本構成を作る
5.ピッチ資料のバージョンは複数用意する
6.会場の雰囲気を察知して、臨機応変に対応
7.最初は上手くいかないのは当たり前なので、取り敢えず勇気を持って人前でピッチしろ。変わるから!


という感じでダラダラと書いたが、これはあくまで私の経験談からによるものなので、異論反論はあると思う。
少しでもこれからピッチに臨む起業家のお役に立てれば幸いです。

コンビニとスマホ

月曜日22時にTV Tokyoで放映されている「未来世紀ジパング@8月19日」を見ていたふと思ったことをツラツラ。

放送されていたのは「日本式コンビニがアジアで革命」という内容で、インドネシアに進出しているコンビニ特集だった。


コンビニは時代とともに役割が変わってきていて、最初はスーパーの代替として登場し、宅配便の取次、公共料金収納代行、銀行ATM設置、
郵便ポスト設置等サービスは拡大され、今は顧客接点の「場」として機能している。

これって携帯の進化も似たような過程を踏んでいて、固定電話から移動電話へ。その後インターネットの役割を担い、音楽プレイヤー、
高解像度カメラの搭載等の機能が加わっている。

つまり、コンビニと一緒で役割が変化(機能拡張)している。

今じゃスマホがテレビのリモコンやクーラーの設定なんかも日常の道具として肌身離せないものとなっている。


そう考えると、新たなニーズを生み出すのではなく(新しい行動習慣を作ることは消費者の受け入れに時間がかかる)、
行動原理に則りスマホやアプリで届けられるサービスは何か?という観点で新しいサービスを生み出していくべきかも。


例えば、私は財布の中をかさ張らないようにしたいから、極力カード等を入れないようにしている。そーすっと、カード達は財布内の
ポジション争いでいかにして勝つかがイシューになるんだけど、スマホが代替する時代になった。

O2Oビジネスの台頭でポイントカードとかはスマホアプリに成り代わって来てるし、要は「消費者の行動原理に則りスマホで何が出来るか?」を
着眼点にしたら、ビジネスの可能性は広がるんじゃないかな

痛み止め(must to have)とビタミン剤(better to have)

以前リプレイスモデルとクリエイションモデルの違いを言及したのだが、少し考えが整理できたので備忘録のついでに記してみる。

顕在化している市場が抱えている問題点を、新たなスキームで解決するのがリプレイスモデル。
非効率な市場で、顧客はしょうがないから今あるサービスを利用している状態。
何か代替出来るサービスが無いか、顧客が探していたら大いにチャンスはある。


まだ市場として成り立っていなくて(つまり供給者がほぼ居ない)、頑張って需要をゼロから喚起するのがクリエイションモデル。
市場が本当にあるのか、不安で不安で仕方がないのがこれ。
顧客が問題だと認識していない、そもそも自分のニーズに気づいていないなど。


この2つの違いは痛み止め(must to have)とビタミン剤(better to have)の話しに当てはまる。
苦痛を伴っており無いと困るのが「痛み止め」、あるといいな!でもあってもなくても困らないのが「ビタミン剤」。
痛みってすでに問題を認知しているから、苦痛から解放されたくなるのでニーズではなくて需要となる。


| マネタイズを考える

フリーミアムや広告モデルなど数パターンかあるが、顧客の課題から見てみるとマネタイズのポイントは2つあると思う。

□恒久的に問題が発生する
毎月起こる問題、例えば仕分けや帳簿などの会計は企業がある限り半永久的に問題を抱えている。
そのため、面倒な会計作業はアウトソーシングや自動化出来ると嬉しい(ただし人的リソースの少ない企業が対象)。

なので、月額の課金モデルは非常にフィットするし、且つデータを蓄積するストックモデルは会計サービスと相性が良い。
データ蓄積型の場合スイッチングコストも高まるので、エントリーストラテジーは無料から入り、途中から有料化にするという
やり方がベターだと思う。


□単発的に問題が発生する
トランザクション毎の課金形態となる。
今プレイヤーがしのぎを削っているイベント系サービス(集客手段、決済、出席者管理などの問題が発生する)や決済系サービス等が該当する。
トランザクション型サービスは顧客が顧客を呼ぶモデルだと、トランザクション頻度が高まって良いのではないか。


データ蓄積☓ストック型のビジネスモデルは理想だなーと、最近色んなビジネスモデルを研究していて思う。

それとビジネスモデルを考える際にスキームありきからスタートする場合は、必ずしも顧客の課題を解決するベストなものと限らない。
サブスクリプションが流行っているからといって、(商材にもよるが)顧客が定期購買を求めているわけではない。



ところで、この前アメリカのVCと話しをしたのだが、彼らはリプレイスモデルよりクリエイションモデルに投資する傾向があるようだ。
理由は大化けするのが後者の方が可能性として高いらしい。
FacebookTwitterに初期投資するのはそういう理由があるみそうだ、なので痛み止めよりビタミン剤に魅力を感じるとのこと。