簡単に作れる事業計画&予実管理のエクセルテンプレート(P/Lのみ)

日本中が歓喜した稀勢の里初優勝、横綱昇進、稀勢の里ファンにとってこの1週間は忘れられない時間となったのではないだろうか。稀勢の里を若い頃から応援していた自分としては感動のあまり、勢いで事業計画/予実管理のエクセルテンプレート(P/Lのみ)を作ってしまった。

 

さてさて、スタートアップ関係の人と話をしていて、事業計画について話題に挙がることがたまにある。3月決算の場合、丁度この時期は来期の予算編成が始まっている企業が多い。

 

事業計画の作り方は様々でこれが正解というものはないが、ある程度フレームみたいなものはある。自分自身も経営企画に携わっていることもあり、色々な事業計画を見てきて、僭越ながら(突貫工事で作ったため大したモノではないが)簡易的なテンプレートを公開してみようと思う。

*投資銀行/戦コン出身者、それに近しいレベルの人達からしてみたら、ただのエクセルマナーなので、見る価値が無いことは最初に断っておく

 

【事業計画を作る際の要素】

1.サマリー
2.パラメーター
3.数値シミュレーション

 

エクセルファイルの構成としてはこの要素が最低限必要になる。

「アップルとパイナップルをECで売る」という、稀勢の里が優勝した瞬間にテレビを見ながら思いついたモデルのため、適当感満載だが(*´з`)、例を見ながら見ていこう。

( *数字は適当に入れているので、触ってみてください)

 

1.サマリーについて

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売上から原価、売上総利益販管費、営業利益、経常利益、当期純利益までの全体感。パラメーターを触ることでどれ位数字が動くのか、一目で分かるように作ってある。四半期決算を意識したサマリーと月次推移を用意しておくのが基本だと思っている。このファイルは簡易版なので、シミュレーション(営業利益以下は入れていない)を月次扱いとしている

 

2.パラメーターについて

事業計画のポイントとなるのがパラメーターの設定だ、単年度のものなのでパラメーターは四半期ごとに調整するようにしてみた。

 

 ■トップライン

簡易的なものなのでMoM成長率を適当に置いたが、本当はマーケティングでユーザーをどれ位流入させ、購買プロセス、コンバージョンに至るモデリングやバリュードライバーを見極めたモデリングなどを設計する必要がある。

 

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販管費

人件費はまるっとしてしまったが、一般的には給与に対して法定福利費を15%、賞与引当金にも大体15%の法定福利費を掛けて給与を出す。つまり給与+賞与引当金+法定福利費(給与分15%+賞与分15%)という構図。

広告宣伝費や外注費、通信費などは補助科目ベースで何にいくらを使うのか、例えばチャネル施策にGoogle AdWordsで月額20万円、エンジニアの業務委託費に月額60万円、サーバー費用が20万円など。この3つの科目は売上を伸ばす施策の費用のため、一般的には年間の実行計画/施策を月次毎に羅列して、それぞれにいくら使っていくかを明記することが多いと思う。

採用教育費は一人当たりの採用単価をそれぞれの職種ごとに設定、その他費用は一人当たり月額いくら平均で使うのかを算出してみるといいかもしれない。減価償却費も数字を適当に入れているが、耐用年数などを考慮して計算しないといけない。

 

これらのパラメーターにそれぞれ数字を仮置きしてみて、予算シミュレーションを行い、各関係者と数字を固めていくのが通常の予算編成のプロセスだ。

 

3.数値シミュレーション

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■売上の考え方

作り方としては「販売数」✖「販売単価」=売上、というのが基本で、この掛け算で作る。たまに見かけるのが、売上 / 販売単価=販売数という式で作られているのを見かける。販売数は小数点が入ることは現実的ではないので、小数点以下はないようにしたほうが良い。このファイルでは便宜的にMoMでの月次成長を使っているため、ROUND関数で四捨五入している

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販管費の考え方

このファイルの場合パラメーターに沿って月ごとに数字を反映させているが、人員計画と連関して採用教育費の月次推移がある。

上述したとおり一人当たりの採用単価という考え方を使っているため、人が増えた月に費用が発生する関数を入れると意外と便利である。下の添付は12月から1月にかけて1人増えて、それに伴い採用教育費が発生している想定

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ただ、人事のプロに聞いてみたら、トップラインと違いなかなかコントロール出来るものではないので、予算は四半期でミートさせるように動くのが一般的らしい。

 

 

経営管理

■予実管理

このファイルではシミュレーションで出した数字を予算として使用する。

「実績入力タブ」は月次決算の数字を入れると、「予実管理タブ」で予算達成率、前月対比のサマリーが出るようになっている(予実管理は営業利益まで)。

また損益分岐点の算出も予実管理では結構重要だ。固定費投資が必要なのか、変動費で数字を伸ばしていくのか、ビジネスの性質を見極めるのにCVP分析は意外と役に立つ

 

■予実管理グラフ

予実管理は1.売上高、2.売上総利益、3.販管費、4.営業利益を月次推移で追うことを最低限やらなければいけない。また販管費の構造や損益分岐点、固定/変動費推移、販管費の勘定科目比率などもレポーティングの際大切なので、視覚化しておけば財務状況を立体的に理解できる。自分自身も管理会計レポートを作る時に必ず入れている要素だ。

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販管費構造と損益分岐点グラフは簡単な数式で作れてしまうので、一度ファイルを作り込んでしまえば経営管理上便利だからオススメ。

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 *上の添付

販管費構造

販管費の勘定科目を積み上げ式に視覚化したもの

損益分岐点

よく見かけるグラフ。横に真っ直ぐ伸びているグレー線が固定費、斜め上に伸びているグレー線が総費用、黄色の線が損益分岐点、青色の線が売上を意味する

 

セルを追えば誰でも判る単純なものなので、説明するのが面倒臭いから省くが、それぞれ月次決算の実績を入力したら各月のグラフが生成出来るように参照と関数を組んである。

 

【雑感】

■覚えておいて損はない関数

  1. SUMIF(今回のファイルでは変動費と固定費に分ける際に使用)
  2. VLOOKUP(今回は使わなかったが実務で必ず使っている)
  3. IF/IFERROR(今回のファイルでは達成率や先月対比、月次の採用教育費算出で使用)
  4. CHOOSE(予算管理の月次実績を選択する際に使用、通常は予算シミュレーションのケースを作る際に使うことが多いかな)

 

あと関数ではないが、データの入力規則も選択ケースを入れ込む時によく使っている。

 

■エクセルの初歩的なマナー

  • 文字について

事業計画を作る際にベタ打ちと計算式が入っているものがある。これは色々なところで言われているけど、ベタ打ちは「青字」、計算式は「黒字」にすると他の人にとって分かりやすい。あとよくあるのが、シートによってフォントが統一されていないこと。人それぞれの好みがあるので、一概にも言えないが、私はArialかMeiryo UIで統一しているようにしている

 

  • グループ化

他の人にとって、見ても見なくてもどちらでも良い情報はグループ化をして、スッキリさせておく。今回のファイルでは例として、「シミュレーションタブ」の売上構成や「予実管理グラフタブ」のグラフ作成用に必要な参照をグループ化して隠している

 

  • テーマカラー

ファイル全体の色は統一性があった方が見栄えも良い。基本は会社のカラーかな、このファイルは仕事と関係ないので、個人的に好きな色を使っている。

 

  • 単位の統一

自分がファイルを受け取るときに常々困っているのが単位統一されていないことorz…このファイルでは円、このファイルでは千円、このファイルでは十万円、とバラバラなことがある。会社の規模によって単位はまちまちだが、会社全体で単位を揃えるようにした方がよい。

 

深く考えず適当に作ったので、こんなの財務モデリングじゃねー!とツッコミがあるかもしれないが(今在籍している会社で去年作った予算ファイルは100タブ近く生成し、全て連関した財務モデリングにしたものを事業計画に使っているし)、スタートアップや新規事業立ち上げ、小規模な事業企画くらいのレイヤーだったら使えるかも。

 

ファイルはこちらで販売しております。

note.mu