管理会計の予実エクセルテンプレート
管理会計導入のティップス
*本エントリーとエクセルテンプレートは公認会計士/投資銀行/戦コン出身者、それに近しいレベルの人達からしてみたら、表層的なことにしか言及していないので、見る価値が無いことは最初に断っておく
この夏は期間限定で経営企画の業務委託をやっていて、管理会計導入の要望は一定規模の会社には意外とあるな、と感じていた。そこで管理会計を導入するにあたり、最低限以下の事を進めないといけない
- 部門コードの設計
先ず1番最初に行わなければならないのはこれ。各組織体にコードを割り振り、どの部署やグループがどれ位費用を使っているのかを紐付けるもの。数字を集計する時に必要となるのだが、組織変更の多い会社だと可変性のある部門コードを設計しないと後々苦労をする。縦軸と横軸のマトリックスで割り振るといいかもしれない
- 経理と総務との連携(ワークフロー整備)
これがとても重要で経理には仕分けをする際に部門コードも同時に付けてもらう必要がある。また総務には経費精算や費用の流れなどが判る新たなワークフローの設計と導入/運用をしてもらい、購買申請など各部門のお金の動きを見える化しなければいけない。詰まるところ経営管理部門の動き方も大きく変わってくるので、コストが嵩むのが難点ではある
- 部門別損益計算書のステップ
部門別損益を算出するにあたり、以下のステップを踏襲するのが一般的である。①変動費と固定費の分解、②固定費の分解、③個別固定費の分解
上記の通り進めるにあたり、各社変動費と固定費の定義で見解が別れるところだと思う。過去のデータを引っ張ってきて高低点法、スキャッターチャート法などのやり方で変動固定費を分解する方法もある。しかし、今回のエクセルテンプレートは簡易なもののため、売上に紐づくものを変動費、それ以外を固定費とした(本社費配賦も固定費扱いとさせて頂く)。
また導入時期は予算策定プロジェクトが走り出す3ヶ月前くらいからテストをして、期が変わったタイミングで本導入が良いと思う。
因みに以前私が在籍していた企業では予算策定前に経理と一先ず連携しながらテストケースでスタートしてみて、やはり最初の3ヶ月間はチグハグしていた。その後予算策定のタイミングでステップ3までをキレイに設計したことで、週次のモニタリング会議で本社費配賦後営業利益までトラッキング出来るよう、オペレーションも組めるようになった。
そもそも何故管理会計をやりたがるのか
自分の経験上と大企業で経営企画をやっている友人達とも話をしていて共通点は2つかなと
- 財務会計では見えてこないコスト構造の立体化
- 会社全体で利益意識の醸成
月次決算で上がってくるP/Lを眺めつつ、更に深く事業ごとの費用やどれくらい投資をしているのかが分かると経営管理のレベルが上がる。また事業部門は売上高や売上総利益には目を向けがちだが(目標設定がトップラインのみがその要因ではある)、一体どれ位の事業貢献利益を出しているか、中々分からないものでもある。事業で出す貢献利益とバックオフィスや全社共通で使う間接費を分けて見れるようになると、自社のコスト構造が腑に落ちやすいように思う。
それと「業績指標管理と人事考課の連動」が出来るのも、管理会計を導入するメリットでもあると考える。これは高度な経営管理だと個人的には感じているのだが、経営戦略を予算に落とし込み、事業のKPIが財務モデリングと全て紐付けて、業績指標管理を週次の経営会議や部門会議でトラッキング出来るようにする。またそれらが達成できているかどうか、期初の個人目標設定と人事考課と繋がれば理想的である。
例えば、売上高と売上総利益、管理可能利益までは部門長の評価とし、事業貢献利益は部門全体の評価(ボーナスに反映などのインセンティブ面)とするのも一案だ。トップラインを構成する各KPIが担当者の評価となる、そんなイメージである
エクセルテンプレートの説明
【予算策定のイロハ】
通常予算を策定する時にケース設定を行う。①楽観ケース、②ベースケース、③悲観ケースや①松、②竹、③梅などが一般的かと思う。ただ、私が相撲好きなので、それに準じて下記のケースで作ってみた。
②大関シナリオを予算とし、例えば下半期に予算を修正する際、2場所連続(第1と第2四半期)で予算を大幅達成するようならば、横綱審議委員会(取締役会)に付議し、期初に立てた横綱シナリオへ上方修正するのも良いだろう。また2場所連続(第1と第2四半期)で大きく予算が下回っており、カド番を迎えているならば、関脇シナリオへ下方修正するというのも有りだ。
一応相撲の形に沿って作っているため、事業体はちゃんこを売る会社の設定である。ちゃんこがそんな高値で売れる筈がないだろう!製造原価の計算が抜けているぞ!と突っ張りや座布団を投げたい気も分からんでもないが、簡易テンプレートのためここは静観してもらいたい
*テンプレートは各事業又は部門/各勘定科目ごとに横綱/大関/関脇と設定してある。数字を入れてもらい、設定を置くとより詳細な事業計画になる
【ファイル構成】
サマリー、シミュレーション、予実管理、実績入力となっている。因みに数字は全て適当に入れているので、真に受けないで欲しい。
・サマリーは四半期と財務会計ベース、それと管理会計ベースにしたもの
・シミュレーションはバリュードライバーを調整し、確定したものを予算として使う
・予実管理は財務会計の予実対比とグラフ(損益分岐点を含む)、管理会計での予実対比とグラフ(本社費配賦後の損益分岐点)、管理会計の予実対比サマリー
・実績入力は決算が固まったら数字を入れて行き、それで対予算比が出るようになっている
また事業計画の考え方は合わせて前回のブログも参照頂けると幸いである
【本社費配賦の考え方】
本社費配賦の考え方は様々なパターンがある。凄く単純なものでいうと人数割り、売上比率割りや、少し手間を掛けるならば間接部門がそれぞれの部門にどれ位役務を提供したのか、時間と費用で割り振ったり等である。
その他には安全余裕率の算出やABC、ABM、投資評価、BSCなどもあるが、そちらは管理会計について事細かく情報を載せているサイトで見てもらえたらと思う。
おさらい
- 事業貢献利益までを部門目標とするならば、予算策定のタイミングで管理会計を導入するのがベスト
- 一方導入するとオペレーションコストが嵩んでしまうデメリットもある
- 予実管理をする時に誰がどの勘定科目に責任を持つのか明確にすると良い
- 経営戦略 → 予算策定(財務モデリングとKPI紐付け) → モニタリング&評価 → 人事考課へ連関出来たら経営のレベルが高い
今回も事細かく作っておらず(原価計算とか入れてないし)、管理会計の入門テンプレートとして見てもらえれば幸いである。
またB/SとC/Fを置き去りにして、P/Lのみ重視していては意味が無いという意見は重々承知している。そこまで作ると手間掛かるので、またの機会に公開してみようと思う。
*ファイルはこちらで販売しております