スタートアップのチームを考える:失敗の分かれ目

先日MOVIDA SCHOOLにOpen Network Lab の前田さんがいらっしゃった。
(ザオリアはMOVIDA Seed Acceleration 3rd Program にSchool生として採択されています)


SCHOOLでは「スタートアップのチームについて」言及していた。
前田さん曰く

1.Hacker
2.Hipster
3.Hustler

この3人で構成されていることが重要であり、
Hackerとはエンジニア、Hipsterはデザイナー、Hustlerはビジネスディベロップメントを指す。
(機能は勿論のことだが優秀であるというのが前提)
そして、社長はデータ分析と戦略立案&実行に移せる人がやるべきだと。
競合とユーザー、市場の動きを観察、予測し次の一手を動かしていくことが必要だからだ。

またOnlabに採択されたチームの多数はPivot(ピボット:サービスの方向転換)をしているようで、
最初のアイディアを突き詰めていくと市場の可能性が無いと判断したら、すぐさまサービスを見直す。
その際たる例でY Combinatorからも出資を受けているAnyperkが挙げられていた。



| 何故そのサービスをやるのか

サービスをやる(起業する)理由って、主に3つかなと思う。
1.身近にある誰かのため/自分自身で感じている問題を解決する
2.将来やビジョンを思い描き、それ(アイディア)を実現するため
3.海外で流行っているサービスを輸入

去年までピッチイベントを出ていて感じたのは他のスタートアップがサービスをプレゼンする時に
必ず「どのような問題」を「〇〇の手法」で解決するというパターンが多く見受けられた。
問題があるからそれを解決するためにサービスを作った(=市場がある)。


エンジニア、デザイナー、ビジネスディベロップメントの3機能が揃っていれば、ビジネスがどのパターンかでスタートできる。
そして、私の周りのスタートアップを見渡してみても3人でキレイに役割分担をしているチームは多い。

ただ、周りで上手くいっていない(自分が言うのもおこがましいが…)、もしくはサービスを畳んだチームとそうでない
チームの差は何なのかな?と最近考えるようになり、1つの仮説が浮かび上がった。


それは「そのチームがサービスをやることの意義や意味があるのか」「チームと市場がフィットしているか」どうかだ。


全く経験のない分野でサービスを作ったところで、自分事と捉えることと知見が無い状態でやったとしても、
上手くいかないと思える。特に3. のパターンで起業した場合はそう感じることが多い。
(あくまで仮説なので数字で表さないと証明できないけど)

サービスをそのチームがやる“必然性”が無い場合、マネタイズはおろか思うようにユーザー数も伸びず途中で諦めるパターンが多いように思える。
特にモチベーションの維持にコストがかかっている部分が大きい。



| チームがビジネスモデルという意味

理想的なチームはどういう要素が揃っているのか、とたまに考えることがある。
現時点での結論は3機能が揃っていて、3者の問題意識と目指す方向性(= ビジョン)が一致しているチームだ。
解こうとしている問題が明確ならゴールはブレないし、自然とその解決方法が決まってくる。
解決方法はいくらでもあると考えられるし、マーケットフィットしなかったらゴールは変えずにPivotすればいい。


まだ自分の中で考えがまとまっていないが、問題 = 市場となるならば、共有している問題意識が必然性を生むと思う。
そして、その必然性がビジネスモデルとして構築されていくのではないだろうか。

問題提起とソリューションのズレが起こした、ミクシィのとても良い失敗事例

ミクシィ新規事業「Petite jete」半年で終了 「コンセプトが受け入れられなかった」
http://www.itmedia.co.jp/news/articles/1301/21/news079.html


去年からミクシィ社が新規事業をどんどん初めて、少ない人数で新しいサービスを素早く作っていくことが奨励されていた。
その第一弾の事業が「Petite jete」だ。
爆速中のYahoo!DeNAなんかもこのような動きが盛んになっており、私はこれを「大企業のスタートアップ化」と呼んでいる。

顧客開発モデルやリーンスタートアップの浸透により、Fail Fastという考え方も当たり前になってきて、短期間でユーザーが増えなかったらすぐに畳む。
このような流れは新規事業の意思決定に半年〜1年費やしていく、今までの大企業の在り方そのものを変えていく新しいマネジメントであると思う。
組織の最適化をすることと逆行しており(正確にはどちらにも力を入れていると思うけど)、大企業がスタートアップの集合体化していると
いっても過言ではない。



このニュースを見た時に感じたのは、大企業としてのスタンス変化とサービス設計の罠である。


記事によると

“ミクシイ米国本社から仕入れた「米国でサブスクリプション(定期購入)コマースが立ち上がり始めている」という情報だった。 

〜中略〜 

SNSmixi」と相性が良く、ユーザーの悩みを定期購入で解決できる商材の可能性を探る中、「20代女性向けのオフィスカジュアル」という
コンセプトが浮かび上がってきた。”

…..とある。


ミクシィの会員を活かしつつ、今流行っているサブスクリプションの新スキームでサービスを立ち上げたようだ。
確かにアセットを活用して、サービスを設計するのは理にかなっている。
SWOT分析から導き出した“S(会員) ☓ O(サブスクリプションが流行っている)"タイプのビジネスだ。


サービスを閉じた理由は「思ったほど市場規模が大きくなく、市場を拡大させるにしても、そのスピードはミクシィが望む速さではなさそう」と
判断したそうだ。外部ネットワーク性が働くモデルと比較すると、どうしても成長のスピード感は見劣りするだろう。


| 問題提起とソリューションの不一致

私がこの事業撤退の意思決定で素晴らしいと思ったのは

「消費者が洋服を買う要因は商品の魅力であること。Petite jeteが提案するファッションのテイストが好きで購入してくれている」と
分析が出来ている点だ。

サービスコンセプト(問題提起)である「毎日仕事で着ていくオフィスカジュアルを定期購買できる」というのはソリューションでは無かったと
言い切っている。


よく我々スタートアップがやりがちな問題提起とソリューションが微妙にズレており、中々サービスがドライブしない例と全く同じである。
そのためピボットをして、ソリューション方法を変えるというのはよくやるが、ミクシィの場合はそれをやらなかった。

“ラインアップを増やしてファッションECサイトに寄せていけば売れるかもしれないが、それをミクシィがやる必要があるのかと考えると疑問が湧き、
続けないという判断をした”と記事には書いてある。
何故このビジネスをミクシィがやる必要があるのか、を追求した結果やる必要性を感じなかったと結論づけている。

0からサービスを立ち上げる時、何故我々がやるべきなのか(確かドラッカー先生もこれが重要だと言っていた気がする)。
問題提起をして、解決された後の状態/ビジョンを示すストーリーというのはとても大切なものである。
それと合致しなかったらやるべきでない、という判断を大手企業でもした。


市場はあるにも関わらず、消費者行動のファクターと問題提起及びソリューションが微妙にズレた、とても良い失敗事例と言える。
流行っている新しいスキームがフィットすると勘違いをして、罠にハマった教訓を得た。

ビジネスモデルの雑感 - リプレイスとクリエイションタイプ

新年明けましておめでとうございます、今年もよろしくお願い致します。

さて、ビジネスモデルの話しをしていると、1,000億円市場を狙え!って話題が出てくる。
まだ見ぬ新市場が1,000億円あるぜ!って、フェルミ推定したところで前提は如何ようにもなるので、
これってアンゾフのマトリックスで言うところの「既存市場」×「新スキーム」を指すのだと思う、リプレイスタイプと呼ぶ。

つまり既存プレイヤーからの顧客をリプレイスするということ。

これだったら市場の成長スピードを危惧することが無いし、既存サービスに不満タラタラユーザーの課題を解決すればいい。
(スタートアップが既存スキームで乗り込んだところで既存プレイヤー、特に大手からシェアは取りづらい)
それと既存市場のプレイヤーに対して新スキームで乗り込むメリットは、コスト構造を突きやすい点が挙げられる。

単純な例でいうと、人材市場で企業から広告費を頂くモデルだとする。そこには大手が蔓延っていてほぼ寡占状態としよう。
そこにソーシャルメディアを活用した「友人を介したリクルーティング」モデルの新スキームで乗り込んで上手く言った場合、
大手は広告費モデルで事業が成り立っているので、ソーシャルメディアを活用したモデルに転換したくても、(自己否定を)簡単には出来ない。
この場合どうするかというと、経営戦略論では子会社を作って利益相反を避けるように教えられている。


おっかないのが「新市場」×「新スキーム」の組み合わせでやるビジネス、クリエイションタイプとでも呼ぶ。
市場の成長スピードや規模感がつかめない、市場の読み違いを起こしてしまうリスクが高いためだ。


市場を考察する上で、フィリップ・コトラー大先生は購買意欲を以下の3つに定義している。

1. ニーズ:欠乏を感じている状態

2. 欲求 :ニーズが具現化された状態

3. 需要 :欲求に購買力/購買行動が伴う状態


「新市場」×「新スキーム」の場合、ニーズ(欠乏を感じている状態)から欲求(ニーズが具現化された状態)、
そして需要(購買力がある/購買行動を伴う)までのプロセス形成に時間が掛かる。
つまるところ顧客候補が課題と思っていないこともあるので、教化しなければならず、コストが高くつき、
スタートアップが啓蒙活動しても簡単に何とかなるもんでもない。
既存市場の場合、需要が明確にあるわけで(お金が流通しているから市場)、リプレイスにのみ注力すれば良いといえる。


市場の読み違いが起こる原因の1つは “欲求 = 需要” と勘違いする場合かもしれない。
欲求がある顧客候補がいたとしても、ドンピシャのソリューション(バリュー・プロポジション)を提供しないと需要は換気されないし、
欲求だけでは市場形成とは言えないので、ここら辺は勘違いしないように気をつけないといけない。


で、ここで1つ疑問が。新しいスキームで既存市場からパイを奪うというのは、市場成長に寄与出来るのか?
新しい価値提案が出来るけど、顧客のスライドでしかないとの考えもある一方で、今まで動かなかった層も動くかも、という淡い期待もある。
ここらへんはまた別の機会で考えてみようと思う。