リスクを取れる人材

今までスタートアップとベンチャーの違いがイマイチ腑に落ちなかったんだけど、
4月4日(木)22:00〜 に放送されたカンブリア宮殿を見て理解した(出演された孫泰蔵さんは孫正義氏の弟)。

起業するためのコストが下がり、カジュアルな起業スタイルがスタートアップなんだな、と。
大義名分や大掛かりに始めるのは以前の起業スタイルで、今は身近な誰かの為にサービスを通して問題解決や新しい体験を提供するという
動機で始めていると仰っていた。

なるほど!


大企業で決まりきった業務フローに従事するより、不確実な中でスキーム設計と事業構築をする仕事した方が絶対面白いと思う。
スタートアップって気重にやるんじゃなくて、フランクな起業スタイル。失敗を経験として吸収出来る人材なら、リスクでも何でも無い。
ただ、失敗が烙印のように評価される人には向いていないんじゃないかなとも思えた。

失敗 = 経験とは、不確実性を伴うチャレンジをした証拠。そのためには仮説思考と検証作業が必要。
っで、不確実性が多い新規事業には仮説検証のサイクルを回せる能力が求められるし、
定型業務しかやってこなかった人にはこれから、厳しい時代になるのではないだろうか。
つまり、スキルはコモディティ化することを意味する。



| リスクをリスクと思わない人

将来に対する不安は誰にでも平等にある。安定的な仕事と収入、家庭、持ち家…
経済環境はガラリと変わっているのに一昔前の価値観を追い求めている矛盾はある。
→ この点については人それぞれの価値観なのと、日本としての国家維持という観点では子供が出来たことに越したことはないので、批判は受け止めます
不安というのは先を見据えた時に不確実な要素の度合いが強く、アンコントローラブルだと認識しているから生まれるのだ。


大企業に居たら、事業ポートフォリオさえしっかりしてたら安定である。
(投資サイクルが回っていのると新規事業が生まれて既存事業でキャッシュが稼げているという意味で)

理由は比較的優秀な人が多く働いているからだ。給与もいいし、仕事の出来る人が集まるから自然と切磋琢磨される環境になる(…はず)。

そのため、将来CFのボラティリティが低いので収入も見込める。キャッシュが入るのが前提なら将来設計も立てられるし、金銭的な不安は無い。

一方将来CFが安定している事をリスクと考える人がいる(極少数派)。
そのタイプは仕事の対価に給料を得るという考え方が無く、サラリー志向じゃない。
能力に見合った仕事をすることを前提としないので、与えられた仕事をこなす感覚ではなく、自ら価値を創り出すことに意義を求めている。

価値創造を出来る人にとっては安定、つまり安全レールに乗せられて他人の意図通りに生きる事が家畜だと認識しているし、
自分で自分の人生をコントロール出来なくなること程、つまらないものは無い。
社会に価値を提供して、認められると会社員をしているよりも莫大な報酬(金銭面以外にも)が返ってくるのは自明の理である。



| 人材のコモディティ化

上述したように定型業務に勤しむ人と、新しいスキーム(価値)を創り出す人とでは市場価値が全然違う。
優秀な人ほど後者なのは言うまでも無いし、転職市場で重要視される「再現性」という意味では如何様にも応用が効くタイプだ。
(転職というキーワードを出したのは起業にチャレンジして、失敗したとしても市場価値が高まる傾向があるため)

(様々な切り口はあるが)個人的には優秀と呼ばれる人には2つのタイプに分けられるかなと思う。
・業務処理能力が高い
・新しい「何か」を生み出す人


昔のように経済が一定成長をする時代ならオペレーションが重視されたので、業務処理能力が高い人は評価されたと。
一方で今の時代は継続成長するには変化に対応する能力も求められ(ラーニングアジリティ)、定型業務だけに従事している人には
キツイ時代になってくるはずだ。その理由はスキルの代替性が高まり、極論を言うと誰にでも出来るようになるような仕組みを
考える人が価値を生むからだ。


私はスタートアップの世界に飛び込んで、常々感じているのが
「何も無いところから何かを生み出せる事はその人自身が価値ある存在だ」と思えるようになった。


「ゼロから1へ」何かを創り上げた人は仮に失敗したとしても、その後のキャリアが面白いほど評価を受けているのを何人か知っているので、
どんどんチャレンジすべきだ。
特に自分で自分の人生をコントロール出来る人は尚更だと思う。

スタートアップのチームを考える:失敗の分かれ目

先日MOVIDA SCHOOLにOpen Network Lab の前田さんがいらっしゃった。
(ザオリアはMOVIDA Seed Acceleration 3rd Program にSchool生として採択されています)


SCHOOLでは「スタートアップのチームについて」言及していた。
前田さん曰く

1.Hacker
2.Hipster
3.Hustler

この3人で構成されていることが重要であり、
Hackerとはエンジニア、Hipsterはデザイナー、Hustlerはビジネスディベロップメントを指す。
(機能は勿論のことだが優秀であるというのが前提)
そして、社長はデータ分析と戦略立案&実行に移せる人がやるべきだと。
競合とユーザー、市場の動きを観察、予測し次の一手を動かしていくことが必要だからだ。

またOnlabに採択されたチームの多数はPivot(ピボット:サービスの方向転換)をしているようで、
最初のアイディアを突き詰めていくと市場の可能性が無いと判断したら、すぐさまサービスを見直す。
その際たる例でY Combinatorからも出資を受けているAnyperkが挙げられていた。



| 何故そのサービスをやるのか

サービスをやる(起業する)理由って、主に3つかなと思う。
1.身近にある誰かのため/自分自身で感じている問題を解決する
2.将来やビジョンを思い描き、それ(アイディア)を実現するため
3.海外で流行っているサービスを輸入

去年までピッチイベントを出ていて感じたのは他のスタートアップがサービスをプレゼンする時に
必ず「どのような問題」を「〇〇の手法」で解決するというパターンが多く見受けられた。
問題があるからそれを解決するためにサービスを作った(=市場がある)。


エンジニア、デザイナー、ビジネスディベロップメントの3機能が揃っていれば、ビジネスがどのパターンかでスタートできる。
そして、私の周りのスタートアップを見渡してみても3人でキレイに役割分担をしているチームは多い。

ただ、周りで上手くいっていない(自分が言うのもおこがましいが…)、もしくはサービスを畳んだチームとそうでない
チームの差は何なのかな?と最近考えるようになり、1つの仮説が浮かび上がった。


それは「そのチームがサービスをやることの意義や意味があるのか」「チームと市場がフィットしているか」どうかだ。


全く経験のない分野でサービスを作ったところで、自分事と捉えることと知見が無い状態でやったとしても、
上手くいかないと思える。特に3. のパターンで起業した場合はそう感じることが多い。
(あくまで仮説なので数字で表さないと証明できないけど)

サービスをそのチームがやる“必然性”が無い場合、マネタイズはおろか思うようにユーザー数も伸びず途中で諦めるパターンが多いように思える。
特にモチベーションの維持にコストがかかっている部分が大きい。



| チームがビジネスモデルという意味

理想的なチームはどういう要素が揃っているのか、とたまに考えることがある。
現時点での結論は3機能が揃っていて、3者の問題意識と目指す方向性(= ビジョン)が一致しているチームだ。
解こうとしている問題が明確ならゴールはブレないし、自然とその解決方法が決まってくる。
解決方法はいくらでもあると考えられるし、マーケットフィットしなかったらゴールは変えずにPivotすればいい。


まだ自分の中で考えがまとまっていないが、問題 = 市場となるならば、共有している問題意識が必然性を生むと思う。
そして、その必然性がビジネスモデルとして構築されていくのではないだろうか。

問題提起とソリューションのズレが起こした、ミクシィのとても良い失敗事例

ミクシィ新規事業「Petite jete」半年で終了 「コンセプトが受け入れられなかった」
http://www.itmedia.co.jp/news/articles/1301/21/news079.html


去年からミクシィ社が新規事業をどんどん初めて、少ない人数で新しいサービスを素早く作っていくことが奨励されていた。
その第一弾の事業が「Petite jete」だ。
爆速中のYahoo!DeNAなんかもこのような動きが盛んになっており、私はこれを「大企業のスタートアップ化」と呼んでいる。

顧客開発モデルやリーンスタートアップの浸透により、Fail Fastという考え方も当たり前になってきて、短期間でユーザーが増えなかったらすぐに畳む。
このような流れは新規事業の意思決定に半年〜1年費やしていく、今までの大企業の在り方そのものを変えていく新しいマネジメントであると思う。
組織の最適化をすることと逆行しており(正確にはどちらにも力を入れていると思うけど)、大企業がスタートアップの集合体化していると
いっても過言ではない。



このニュースを見た時に感じたのは、大企業としてのスタンス変化とサービス設計の罠である。


記事によると

“ミクシイ米国本社から仕入れた「米国でサブスクリプション(定期購入)コマースが立ち上がり始めている」という情報だった。 

〜中略〜 

SNSmixi」と相性が良く、ユーザーの悩みを定期購入で解決できる商材の可能性を探る中、「20代女性向けのオフィスカジュアル」という
コンセプトが浮かび上がってきた。”

…..とある。


ミクシィの会員を活かしつつ、今流行っているサブスクリプションの新スキームでサービスを立ち上げたようだ。
確かにアセットを活用して、サービスを設計するのは理にかなっている。
SWOT分析から導き出した“S(会員) ☓ O(サブスクリプションが流行っている)"タイプのビジネスだ。


サービスを閉じた理由は「思ったほど市場規模が大きくなく、市場を拡大させるにしても、そのスピードはミクシィが望む速さではなさそう」と
判断したそうだ。外部ネットワーク性が働くモデルと比較すると、どうしても成長のスピード感は見劣りするだろう。


| 問題提起とソリューションの不一致

私がこの事業撤退の意思決定で素晴らしいと思ったのは

「消費者が洋服を買う要因は商品の魅力であること。Petite jeteが提案するファッションのテイストが好きで購入してくれている」と
分析が出来ている点だ。

サービスコンセプト(問題提起)である「毎日仕事で着ていくオフィスカジュアルを定期購買できる」というのはソリューションでは無かったと
言い切っている。


よく我々スタートアップがやりがちな問題提起とソリューションが微妙にズレており、中々サービスがドライブしない例と全く同じである。
そのためピボットをして、ソリューション方法を変えるというのはよくやるが、ミクシィの場合はそれをやらなかった。

“ラインアップを増やしてファッションECサイトに寄せていけば売れるかもしれないが、それをミクシィがやる必要があるのかと考えると疑問が湧き、
続けないという判断をした”と記事には書いてある。
何故このビジネスをミクシィがやる必要があるのか、を追求した結果やる必要性を感じなかったと結論づけている。

0からサービスを立ち上げる時、何故我々がやるべきなのか(確かドラッカー先生もこれが重要だと言っていた気がする)。
問題提起をして、解決された後の状態/ビジョンを示すストーリーというのはとても大切なものである。
それと合致しなかったらやるべきでない、という判断を大手企業でもした。


市場はあるにも関わらず、消費者行動のファクターと問題提起及びソリューションが微妙にズレた、とても良い失敗事例と言える。
流行っている新しいスキームがフィットすると勘違いをして、罠にハマった教訓を得た。