経営企画ソルジャーがフリーランスになって、3ヶ月が経った。

2019年4月より経営企画支援をするフリーランスとして独立し、3ヶ月が経った。営業に行くと経企ソルジャー(傭兵?)は珍しいと言われることもよくあり、エンジニアやデザイナーとは違い、まだまだジャンルが確立されていないと感じる。

ただ、ありがたい事に取引社数も順調に伸びてきており、難易度の高い案件、自分自身でも経験が浅い領域の案件、無茶振り案件(涙)など、独立しても学びがあり、日々やり甲斐を感じている。思い返せば、元々キャリアのスタートが営業だったこともあり、クライアントの課題解決を果たす事に面白みを感じてきたため、フリーランスとして働くのは向いているのかもしれない。

 

さて、この3ヶ月は試行錯誤しながら進めてきて、漸くペースが掴め回り始めて来たので、普段支援をしているメニューを体系化してみた。

 

支援の基本メニュー

  1. 予算策定
  2. 管理会計の設計と導入
  3. 会議体の設計と運用
  4. 経営管理体制の構築
  5. 企業ステージ毎の成長戦略
  6. 新規事業立ち上げ支援及び市場動向調査
  7. 経営企画チームの強化

 

上場企業から未上場ベンチャー、スタートアップ等、様々な企業へ上記のメニューでご提供差し上げている。Speaker Deckにも支援した&現在進行形で支援している内容を上げているので、ご参照して頂けると幸いである。

自分自身が提供できるところと、クライアントから求められている事がメニューとなっているので、見方を変えれば経営者から経営企画に求められている事、とも受け取れる。特に経営企画チームをどうしていくべきか、等は各社課題意識が強いところでもあるので、自分でも過去の経験を擬え、「もっとこうすれば良かったな」と反省しながら支援をさせて頂いている。

 

speakerdeck.com

 

①予算策定について 
管理会計の設計と導入について
  • 財務会計の分解からスタートし、変動費と固定費に分け、管理可能利益の設計
  • 管理会計と事業KPIの繋ぎ込み、事業ドライバーの見極め
③会議体の設計
  • 取締役会から逆引きで考え、経営会議(経営イシューや決議)、モニタリング会議(事業KPIやP/Lの管理)、各部門会議を設計し、経営者の説明責任をサポート
  • 各会議体に連動性を持たせて、経営活動の視える化
経営管理体制の構築
  • 事業活動を補佐する意味での経営管理体制を構築
  • 予実管理、ワークフロー整備、管理部オペレーションの連関性を強化
⑤企業ステージ毎の成長戦略
  • 経営戦略を立案する際、ステージを区切っていくと整理が付きやすい
  • 各ステージ毎に課題を設定し、短期/中期の目線で立案
⑥新規事業立ち上げ支援及び市場動向調査
  • マーケット及び競合調査
  • 新規事業チームの立上げ、アイディア検討、プロトタイプ開発&ユーザーテスト
  • 事業計画作成、社内の予算承認、プロダクトローンチ
⑦経営企画チームの強化 
  • 経営企画の価値明文化
  • 経営ステージ毎における役割の設定 

 

上記は体系化したメニューになるが、既存事業支援やファイナンス / IR、PR、その他経営企画業務とはあまり関係の無いこともやっていたりもする(面倒臭い業務のアウトソーシングとしても、ご活用頂いているため)。まだまだ走り出したばかりで事例も数える程度しかないが、これから自分自身の業務の幅も広げていく所存である。

 

最後になりますが、もし経営企画支援のご依頼やご相談がありましたら、 

" keiki.info@gmail.com " まで、ご連絡を頂けますと幸いです。

予算策定の簡易マニュアルを作ってみた

稀勢の里が電撃引退発表をした2019年1月16日、傷心しきった中「予実ナイト」というDIGGLEさんが主宰したイベントに登壇をしてきた。経営企画の横の繋がりを増やすイベントはあまりなく、且つ丁度予算策定の時期とも重なり、イベントは盛況だったように思う。その際色んな方からご質問やご相談を頂いた事もあり、折角なので登壇内容を端折って書いてみることにした。

*スタートアップ向けのイベントだったこともあり、想定としては50~300名くらいの規模の会社です。また個別具体例ではないので、かなり抽象化しています。加えて規定回りや上場準備中~上場後の企業に求められる具体的なノウハウにも本ブログでは言及していないので、あまり参考にならなかったらゴメンなさい。

 

以下が本ブログの目次(3,179文字とやや多め)

  1. 経営企画としての年間の動き
  2. 予算策定の進め方
  3. 管理会計のティップス

 

経営企画のスケジュール(3月決算の場合)

"予算策定"という切り口のみで考えると、次年度予算は3月の取締役会、下半期の修正予算は9月の取締役会にて承認する場合が多いかと思う。4月に社内で予算共有、8~9月に下半期予算修正期間、10月に下半期の予算共有、1~3月に次年度予算策定期間、という流れになる。

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 振返ってみると1年のうち4~5ヶ月は予算策定に関する業務をやっているのか、と自分でもビックリだ。経営企画の業務はざっくりと2つに分かれており、

・定常型:予算策定や予実管理、管理会計業務、各会議体運営、IR、事業環境分析

・突発型:経営戦略立案、ファイナンス、新規事業立ち上げ、プロジェクトマネジメント等

定常業務の合間や同時並行でプロジェクト型業務をスポットで随時回している事が多いかも。定常業務にリソースが比較的取られてしまうことが悩みの種でもある。

 

予算策定の進め方

予算策定を進めるにあたり、関係者は以下の3つに分けて考えると良い。

A. 取締役(会)

B. プロフィットセンター・事業サイド

C. コストセンター・管理部門

便宜上この3つにしているが、下図のように機能別での切り口も作ったりすると、より立体的に事業構造が見えてくるので、手間が大変係るけど予算構成をもう1つ作るのはオススメ。

 

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予算策定の概要

大体予算策定は1月に始まり、3月の取締役会での承認、稀に臨時取締役会までもつれることもあり得る。概要としては①~⑩までの流れになる

 

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①プロジェクトの準備

12月に予算の全体像を仮に作りこみ、市場環境分析、KPIの設計、部門設計、追加&削除勘定科目の洗い出し、前年度の実績精査、管理会計の設計、財務モデリング、予算策定の進め方(e.g. トップダウン型 vs ボトムアップ型)を準備してCFOとの摺合せを年内にやっておくと後々楽になる。冬休みはひたすらエクセルで財務モデリングの土台を作るのは毎年の宿題。

②プロジェクトの合意

スケジュール、プロジェクト参加者(部長/マネージャー)、取締役会までの承認プロセス、各責任者の範囲決め、管理会計の設計、本社費配賦、投資計画、目標トップラインとボトムライン辺りを取締役陣と話し合う。

③プロジェクト開始とブリーフィング

取締役陣と合意の取れた内容を精査し、各部門長や責任者と個別で説明の時間を設ける。予め作っておいたモデリングのシートを渡し、事業計画作成のサポートをしておくと、非常に進めやすい(ここで冬休みの宿題の成果が発揮される)。

④各PCとCCの事業計画作成の壁打ち

図表の通りだが、大切なのは各事業ドライバーが何にあたるのか、ビジネスモデルやプロダクトの要諦を理解したうえで各責任者と議論をしないといけない。Product Manager目線だとFP & Aはプロダクトの事をよく理解しないまま予算策定を進めようとする、という声もたまに聞こえてくる。また管理部門とはコスト圧縮や投資インパクト(e.g. ツール導入後の生産性Before & After)あたりは重要。

・事業サイドに対しては競合動向や事業環境の情報提供、戦略の筋、KPIの議論

・管理部門に対しては間接費、大型の投資、管理会計の設計を議論

⑤取締役陣レビュー

これらを持って毎週取締役陣⇔各責任者とで事業計画のレビューを行っていく。最初は粗々だった計画も回を重ねる度に課題が浮き彫りになり、次のラウンドで宿題プラスαを持ってくることで精度が高まっていく(会社によっては合宿までやるところもあるみたい)。このやり取りは取締役会直前まで行うことが通例。

⑥財務モデリングのダブルチェック

④と⑤をやりつつ、経営企画は毎週ブラシュアップされる計画をアップデートしないといけない。その度に財務モデリングを作り込むのだが、如何せん職人芸になりやすい。そこでもう一人の経企メンバーにお願いをして、エクセルのダブルチェックを毎日やると良い(居なかったら財務でもOK)。やり方としては一日数回ファイルの更新をして、”日付け+version○○”という形式でこまめに残しておけば、何か間違いを発見した時のリスクヘッジになる。

⑦エクセルの成形

そろそろ取締役会の足音が聞こえてくる。ここからが正念場で、様々なシナリオに応対した財務モデリングを磨き上げ(例えば、楽観/ベース/悲観ケース)、タラれば、バリュードライバーの精査をして、トップラインやボトムラインの解像度をグッと上げる

⑧最終レビューと役会ストーリー

数値計画と取締役会の承認に向けたストーリー作り。どうやって話しを持って行こうか、過去の数字対比、戦略の肝など。

⑨と⑩付議資料作りと役会準備、役会承認

最終レビューでOKの出た事業計画を精査して、経営計画書に落とし込む。取締役会にてあーだこーだと議論を経て、承認してもらうよう努力する。この時ばかりはドキドキだ。その際承認を見送られたらリベンジマッチ(臨時取締役会)を実施

 

以上が予算策定の概要になる。

 

管理会計の設計

最後に管理会計の話をほんの少しだけ。予算を作り慣れていないと、あまり管理会計を意識しない事が多いように思える。先日参加させて頂いたイベントで色んな方と話しをしていると、トップラインや非財務指標は相当作りこんでいるが、事業部長~マネージャーレイヤーが事業貢献利益まで意識高く管理出来ていないのが共通課題だった。

*この会社の予実管理マジレベル高けぇー、というのがあったら勉強させてほしいです。意見交換させてください。

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 以前管理会計の記事で言及したが、大企業なら当然のようにやっている事業貢献利益までを部門予算に持たせてしまう事が、会社全体で利益意識を高めることに有効だと思う(事業部制の場合)。その際、予算管理規定や職務権限規程も整備する必要が当然あり、予算策定前に準備が整えられたら、翌年度の予実管理が綺麗に回せる。

①事業貢献利益:事業部門予算

②共通固定費:間接部門予算

③営業利益:会社予算

 上記のような3つのレイヤーを予算策定のタイミング3か月前位から管理会計の運用テストを始めて、規定回りの整備や予実管理体制も構築もしていく。そうするとスムーズに管理会計の導入までは出来る。

予算策定や管理会計の導入は様々な人間ドラマが蠢いており大変でもあるが、経営レベルを高めるのは醍醐味でもあるので、個人的には経営企画業務の中で新規事業立ち上げの次に好きな仕事だ。

何かご相談事があれば連絡ください、他社さんのお話しに興味があります。

 

 最後に

DIGGLEさんに招待されたイベントのメインテーマでしたので、次回は予算策定とセットで必要な予実管理の記事を書こうと思います。

因みに予算策定と予実管理に使える管理会計のテンプレート、フォーキャスト管理のテンプレートをnoteで販売しております。ご興味お持ち頂けましたら、ご検討をお願い致します。

note.com

note.mu

 

 

管理会計の予実エクセルテンプレート

 

管理会計導入のティップス

*本エントリーとエクセルテンプレートは公認会計士/投資銀行/戦コン出身者、それに近しいレベルの人達からしてみたら、表層的なことにしか言及していないので、見る価値が無いことは最初に断っておく

この夏は期間限定で経営企画の業務委託をやっていて、管理会計導入の要望は一定規模の会社には意外とあるな、と感じていた。そこで管理会計を導入するにあたり、最低限以下の事を進めないといけない

  • 部門コードの設計
  • 経理と総務との連携(ワークフロー整備)
  • 部門別損益計算書の作成ステップ

 

  • 部門コードの設計

先ず1番最初に行わなければならないのはこれ。各組織体にコードを割り振り、どの部署やグループがどれ位費用を使っているのかを紐付けるもの。数字を集計する時に必要となるのだが、組織変更の多い会社だと可変性のある部門コードを設計しないと後々苦労をする。縦軸と横軸のマトリックスで割り振るといいかもしれない

  • 経理と総務との連携(ワークフロー整備)

これがとても重要で経理には仕分けをする際に部門コードも同時に付けてもらう必要がある。また総務には経費精算や費用の流れなどが判る新たなワークフローの設計と導入/運用をしてもらい、購買申請など各部門のお金の動きを見える化しなければいけない。詰まるところ経営管理部門の動き方も大きく変わってくるので、コストが嵩むのが難点ではある

部門別損益を算出するにあたり、以下のステップを踏襲するのが一般的である。①変動費と固定費の分解、②固定費の分解、③個別固定費の分解

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上記の通り進めるにあたり、各社変動費と固定費の定義で見解が別れるところだと思う。過去のデータを引っ張ってきて高低点法、スキャッターチャート法などのやり方で変動固定費を分解する方法もある。しかし、今回のエクセルテンプレートは簡易なもののため、売上に紐づくものを変動費、それ以外を固定費とした(本社費配賦も固定費扱いとさせて頂く)。

 

また導入時期は予算策定プロジェクトが走り出す3ヶ月前くらいからテストをして、期が変わったタイミングで本導入が良いと思う。

因みに以前私が在籍していた企業では予算策定前に経理と一先ず連携しながらテストケースでスタートしてみて、やはり最初の3ヶ月間はチグハグしていた。その後予算策定のタイミングでステップ3までをキレイに設計したことで、週次のモニタリング会議で本社費配賦後営業利益までトラッキング出来るよう、オペレーションも組めるようになった。

 

そもそも何故管理会計をやりたがるのか

自分の経験上と大企業で経営企画をやっている友人達とも話をしていて共通点は2つかなと

  • 財務会計では見えてこないコスト構造の立体化
  • 会社全体で利益意識の醸成

 月次決算で上がってくるP/Lを眺めつつ、更に深く事業ごとの費用やどれくらい投資をしているのかが分かると経営管理のレベルが上がる。また事業部門は売上高や売上総利益には目を向けがちだが(目標設定がトップラインのみがその要因ではある)、一体どれ位の事業貢献利益を出しているか、中々分からないものでもある。事業で出す貢献利益とバックオフィスや全社共通で使う間接費を分けて見れるようになると、自社のコスト構造が腑に落ちやすいように思う。 

それと「業績指標管理と人事考課の連動」が出来るのも、管理会計を導入するメリットでもあると考える。これは高度な経営管理だと個人的には感じているのだが、経営戦略を予算に落とし込み、事業のKPIが財務モデリングと全て紐付けて、業績指標管理を週次の経営会議や部門会議でトラッキング出来るようにする。またそれらが達成できているかどうか、期初の個人目標設定と人事考課と繋がれば理想的である。

例えば、売上高と売上総利益、管理可能利益までは部門長の評価とし、事業貢献利益は部門全体の評価(ボーナスに反映などのインセンティブ面)とするのも一案だ。トップラインを構成する各KPIが担当者の評価となる、そんなイメージである

 

エクセルテンプレートの説明

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【予算策定のイロハ】

通常予算を策定する時にケース設定を行う。①楽観ケース、②ベースケース、③悲観ケースや①松、②竹、③梅などが一般的かと思う。ただ、私が相撲好きなので、それに準じて下記のケースで作ってみた。

横綱シナリオ
大関シナリオ
③関脇シナリオ

 

大関シナリオを予算とし、例えば下半期に予算を修正する際、2場所連続(第1と第2四半期)で予算を大幅達成するようならば、横綱審議委員会(取締役会)に付議し、期初に立てた横綱シナリオへ上方修正するのも良いだろう。また2場所連続(第1と第2四半期)で大きく予算が下回っており、カド番を迎えているならば、関脇シナリオへ下方修正するというのも有りだ。

一応相撲の形に沿って作っているため、事業体はちゃんこを売る会社の設定である。ちゃんこがそんな高値で売れる筈がないだろう!製造原価の計算が抜けているぞ!と突っ張りや座布団を投げたい気も分からんでもないが、簡易テンプレートのためここは静観してもらいたい

 

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*テンプレートは各事業又は部門/各勘定科目ごとに横綱/大関/関脇と設定してある。数字を入れてもらい、設定を置くとより詳細な事業計画になる

 

【ファイル構成】

サマリー、シミュレーション、予実管理、実績入力となっている。因みに数字は全て適当に入れているので、真に受けないで欲しい。

・サマリーは四半期と財務会計ベース、それと管理会計ベースにしたもの

・シミュレーションはバリュードライバーを調整し、確定したものを予算として使う

・予実管理は財務会計の予実対比とグラフ(損益分岐点を含む)、管理会計での予実対比とグラフ(本社費配賦後の損益分岐点)、管理会計の予実対比サマリー

・実績入力は決算が固まったら数字を入れて行き、それで対予算比が出るようになっている

 

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また事業計画の考え方は合わせて前回のブログも参照頂けると幸いである

 

【本社費配賦の考え方】

本社費配賦の考え方は様々なパターンがある。凄く単純なものでいうと人数割り、売上比率割りや、少し手間を掛けるならば間接部門がそれぞれの部門にどれ位役務を提供したのか、時間と費用で割り振ったり等である。

 

その他には安全余裕率の算出やABC、ABM、投資評価、BSCなどもあるが、そちらは管理会計について事細かく情報を載せているサイトで見てもらえたらと思う。

 

 おさらい
  • 事業貢献利益までを部門目標とするならば、予算策定のタイミングで管理会計を導入するのがベスト
  • 一方導入するとオペレーションコストが嵩んでしまうデメリットもある
  • 予実管理をする時に誰がどの勘定科目に責任を持つのか明確にすると良い
  • 経営戦略 → 予算策定(財務モデリングとKPI紐付け) → モニタリング&評価 → 人事考課へ連関出来たら経営のレベルが高い

 

今回も事細かく作っておらず(原価計算とか入れてないし)、管理会計の入門テンプレートとして見てもらえれば幸いである。 

またB/SとC/Fを置き去りにして、P/Lのみ重視していては意味が無いという意見は重々承知している。そこまで作ると手間掛かるので、またの機会に公開してみようと思う。

 

*ファイルはこちらで販売しております

note.mu